
SADO ISLAND
新潟港からジェットフォイルで約1時間。国際保護鳥、トキの棲む島、佐渡に到着する。面積約855平方メートル、東京23区の1.4倍という本州最大の島は、地形自体が日本の縮図と言われるほど東西南北では異なる表情を持つ。
島の歴史は、遺跡の出土品から1万年前にまで遡る。「古事記」の国生み神話にも大八島の7番目として登場するほどだ。奈良時代には流刑地となるが、順徳上皇、日蓮聖人、世阿弥など、流されてきたのは貴族や知識人がほとんど。彼らの逗留と、近世初期から明治時代にあった北前船の交易により、豊潤な文化や伝統芸能が根付いたのはこの島の特長と言えるだろう。その証左として、2024年7月には、「佐渡島の金山」がユネスコ世界文化遺産に登録されたことも記憶に新しい。


長い歴史に育まれた魅力的な土地は、国内外から人を惹きつけてやまない。現に、人口5万強のうち、令和に入ってから毎年500〜600人が移り住んでいる。彼らも地元民も屈託のない笑顔で口をそろえて「食材がいい」「人がいい」と言う。
コシヒカリや日本酒は言うまでもなく、おけさ柿やビオレ・ソリエスと呼ばれる黒イチジクなどの果物、佐渡牛、ズワイガニやブリなどの海鮮、海藻……挙げたらキリがないぐらい美味しいものにあふれている。
食材と同様に大きな魅力は、“ひと”。佐渡に移住し、ビストロを開いた若夫婦やフランス人、NYでミュージシャンとして活躍したベーカリーオーナーのアメリカ人、ワーキングホリデーで「たらい舟」の漕ぎ手になったフランス人。佐渡にルーツを持つ酒造オーナーや、92歳でフランス語のレッスンを欠かさない元英語教師など、この地を選んだ理由はそれぞれではあるが、異口同音に佐渡の魅力を“ひと”と言う。付かず離れずの程よい距離感でありながら、さりげなく手助けをしてくれる。過干渉になりがちな狭いコミュニティではなく、広く開け放たれている。そんなおおらかな島の魅力が心地よさを生み、旅人をも優しくもてなすだろう。
STAY
御宿 花の木
Hananoki Inn
古民家で味わう、地産地消のありがたさ


廻船業で栄えた小木町宿根木。その緑豊かな田園風景に佇む古民家。嘉永年間に建てられた日本家屋を移築した母屋には、陶芸家でもあるこの宿のご主人、渡辺陶生さんの作品が飾られている。その母屋を通り、ねむの木に歓迎された離れの部屋から見えるのは、一面の田んぼ。その奥に海を臨む景色を眺めていると、都会の慌ただしさが嘘のような静謐な時間が流れる。畳の上でゴロンと横になり、ひと休みしたら、母屋でいただく夕食へ。女将兼料理人の渡辺明子さんがつくる料理は、どれも素材の味を生かしたシンプルなもの。島で採れた旬な食材は、噛み締めるほど滋味深い。ズワイガニが一人一杯提供され、気分も盛り上がる。夕食の締めにいただくのは、この宿のために作っているクラシック米。現在流通しているコシヒカリとは製法が異なる、昔ながらのお米は、何杯でもおかわりしたくなるほど!
2023年には新潟ローカルガストロノミーを受賞したのも納得の丁寧でおいしい食事にホッとする。温泉に入りたくなったら、車で5分の御宿おぎの湯まで送迎サービスも。自家源泉100%高水準アルカリ性温泉は、美肌の湯としても知られ、とろりとした肌触り。そして、加水ゼロ。泉質をダイレクトに楽しめるのもうれしい。奇を衒わず、実直に、いい素材を丁寧に。普段の生活で忘れていた大切なことを思い出させてくれる宿だ。
Guest Villa on the 美一
Guest Villa on the bi-ichi
贅沢な眺望と共に快適なロングステイを

日本海で一番大きな島である佐渡島は、東西南北で異なる魅力があるため、1日や2日では到底回りきれない。ゆっくり腰を落ち着けて島を探索するなら、Guest Villa on the 美一は最適かもしれない。ハワイ在住、ホテル勤務を経て、横浜から佐渡に移住したオーナー山内三信さんが理想とする、宿泊・レストラン・ファンクションホールがひとつの建物に入った複合施設は、居心地抜群。ダブル3部屋、ツイン2部屋のベッドルームは、睡眠を研究し続ける新潟の寝具セレクトショップ「minka-眠家-」がプロデュース。心地よい眠りへと誘ってくれる。そして、なんといってもロケーションが最高!
2階のラウンジからは、真野湾のブルーが目に飛び込んでくる。ハンモックに揺られながら昼寝したり読書したり……この眺めが何よりの贅沢だ。共有スペースであるラウンジには、プロジェクターが設置されているので、ホームシアターも楽しめる。友達や家族で一棟借りしてもいいし、旅先で出会った人たちと交流してもいい。このゲストハウスを起点に、自由に佐渡の旅を満喫できる。オーナーは佐渡のソウルフード「いごねり」を製造する早助屋の4代目店主でもあり、地元の食にも精通している。佐渡島ならではの食に出合いたい際は、相談してみたい。
1階にはフレンチ・イタリアンの「Seisuke next door」(ディナーコースは予約制)が入る。


古道具と手仕事の宿 ねまりや
Antiques and handicrafts lodging NEMARIYA
日本文化のエシカルな生き方の可能性を佐渡から世界に向けて

佐渡の市街地を見下ろす山腹に2024年にオープンした「ねまりや」は、古くてあたらしい日本のエシカルな暮らしを提唱する古材利用100%の宿。6万平米の山を何年もかけて切り開き、山から湧き出た水を引き、電気はオフグリット、お風呂は薪で沸かし、トイレは地球に還元できるコンポスト式。まさに環境循環型のエシカルな宿だ。建物にはすべて佐渡島の古材を使用し、昔ながらの手法を取り入れた建築方法で外観だけではなく、床や壁も古材を組み合わせて造られているため部屋の中も個性的でユニーク。2階のテラスからは、佐渡の山々が一望できる美しい風景が楽しめる。不便を楽しみながら自然の素晴らしさを体感でき、さらに日常の中で忘れかけた自由な時間の過ごし方や大切なことを思い出させてくれる宿なのだ。
ミライサト
Miraisato
豊かな自然の中で農業体験から繋がる未来

両津港から車で20分弱の山のふもとにある「農家民宿・ミライサト」を運営する伊藤さん。「食の生産を担う地方が元気で楽しくあることが大切だ」と思い、2020年に佐渡に移住。2022年より棚田での無農薬栽培、2024年からは引き継いだ約100本のりんごを育てている。「りんごの栽培は、田んぼとは違った苦労があります。現代の品種では、無農薬栽培はかなりハードルが高く、今年は農薬2割減、今後は5割減を目指し、環境と人に優しいりんご作りをしていきたい」と言う。レストランや酒蔵など取材中に何度も「伊藤さんのりんご」という言葉を耳にするほどの人気者。街の人に頼りにされ、愛される伊藤さんは、農業体験を通して、田舎暮らしや農への入り口をつくっている。
「季節により移り変わる山の景色、透明で美しい海、人がつくる里山の風景、何百年も受け継がれる伝統芸能。佐渡はとても魅力に溢れる島です!」。
風を感じたり鳥の声を聞いたり、自然に触れ合う貴重な体験をしに訪れたい宿。


ACTIVITY
宿根木 はんぎり
Shukunegi Hangiri
佐渡の歴史を背景に、スローに進むたらい舟

北前船で栄えた、佐渡の南端・宿根木。その地でたらい舟体験を楽しめるのが、「はんぎり」だ。手作りの半切り(たらい舟)に乗り、海へ。海面スレスレで進むはんぎりは、一見怖いけれど、不思議な安定感で美しい大海原の景色が堪能できる。所要時間15分から45分までとコースの種類は豊富だが、おすすめは所要時間20分の「夕陽夕凪コース」。ゴツゴツした岩場の間で赤く染まっていく空は、きっと旅のハイライト。船頭は、半切りを自作した地元の金子啓次さん、フランスからワーキングホリデーで訪れている女性まで!
あれこれ質問とおしゃべりしながらのクルージングで、より一層佐渡が好きになるはず。
Info
新潟県佐渡市宿根木393(海がわ はんぎり乗り場)
Tel:090-4835-5446
営業時間:9:00-18:00
定休日:11月下旬〜3月中旬
*プランはAコース(15分)、Bコース(25分)、Cコース(35分)、夕陽夕凪コース(15分)の4種。3月中旬〜11月下旬の期間中は基本9:00-16:00の間で約1時間おきに運行、夕陽夕凪コースは17:00-18:00のみ運行。現地現金払いのみ。
*気象、波浪状態によりコース変更、運休の場合があります。
EAT & DRINK
ラ・パゴッド
LA PAGODE
美味しく繋がる、ローカルコミュニティの中心

「都会で働いていたら、こういう働き方はできない。都会だと食材も季節も関係ないですから。佐渡で始まり、佐渡で完結したい」。そう語るのは、2022年に妙宣寺五重塔の向かいにラ・パゴッドをオープンした、フランス出身のジル・スタッサールさん。ヨーロッパ、中国でレストランを立ち上げ、群馬を経て佐渡島に移住。シェフ以外に、現代美術のアーティストでもあり、編集者、写真家、作家、農家、養鶏家の顔を持つジルさんとパートナーの朋さんが営む同店の守護神は、キッチンに鎮座する薪窯。1日12時間はキッチンにいるというジルさんがつくる料理には、この窯が欠かせない。
「ピッツァは300〜400度が適温で、パン・ド・カンパーニュにはまた別の温度がある。夜は魚をローストし、火が消えた月曜日以降も窯の熱を利用します」。細やかな温度と火力の調節は決して容易ではない。「薪も佐渡の森から切り出したものを使っています。日本で良いベーコンを見つけるのは難しいから、自分でベーコン、ハム、サラミ、スモークサーモン、何でもつくります。食材も90%ぐらいは地元産。春は山菜、冬はジビエ。なるべく農薬の少ないものを選んで。この店にはローカルコミュニティがあるので、地元食材を見つけるのは意外と簡単なんですよ」そう。観光名所の目の前にありながら、地元のひとがふらりと立ち寄っておしゃべりする。そんな憩いの場でもある。
(写真は「自家製ベーコンとラパゴッドの中庭で育てた卵のタルティーヌ」¥1,150)
column


佐渡の魅力、“ひと”を体現するスーパーな紳士
ラ・パゴッドの常連のひとり、本間弘美さん。祖父の代から続く山を譲り受け、トラックにチェーンソーを積み、植林伐採を行う健脚な男性だ。ラ・パゴッドには、作業終わりに訪れる。
小学5年生まで東京・荻窪で育ち、戦争で佐渡に疎開。高校卒業まで佐渡で過ごし、一浪して東京大学文IIへ進学。大手出版社に就職するも、3ヶ月の試用期間中に政治思想が元で解雇される。その後、長野県の高校で英語教師として働いたのち、新潟に。新潟商業、佐渡相川、新潟北、北越高校と教え歩き、佐渡に戻り78歳まで教鞭をとっていた、いわば英語のエキスパートである。「卒論はフローベールを選んだのですが、今になってフランス語を勉強したくなり、毎日15分ラジオ講座を聴いています。ラ・パゴッドには一昨年ぐらいから行くようになって、ジルさんにフランス語で近況を伝えています」。
過去に訪れた国は19、御年92とは思えないほど好奇心旺盛な本間さんが感じる、佐渡のいいところとは?「自然が豊か。あとは、住民の気持ちが素朴。人間の素に近い姿に接することができるのがいいですね」。
オリジヌ
origine
佐渡の食材愛にあふれた、心地いいレストラン


長岡でお店を営んでいた伊藤薫さんと小百合さんご夫妻が4年前に佐渡島へ移住し、オープン。「このあたりは素泊まりの宿が多いから」という理由で7時半から朝食を出すユニークなレストランだ。ディナー全6皿¥5,800のコースは、シナノレッドのポタージュから始まり、色鮮やかな野菜のグリル、8〜10月に羽茂川の投げ縄漁で採れる鮎の石焼をアレンジした一皿、魚のロースト、稲わらで焼いた佐渡牛にヤマドリタケモドキを添えたもの。どれも佐渡の味がぎゅっと凝縮されていて、ナチュラルワインが進んでしまう。締めには「まずはお米だけ食べてみてください」と、一口サイズの炊き立てのごはんが。これがとびきり美味しい!
聞けば、2015年に佐渡島に移住した伊藤竜太郎さんが作る無農薬の「てんてこ米」だそう。そのてんてこ米に地元・小木のサザエを混ぜたおにぎりは絶品。デザートの黒いちじく「ビオレ・ソリエス」のタルトをいただきながら、お二人に佐渡の魅力について訊いてみると、「食材がいい。あと、人ですね。僕たちがオープンするときも、近所のみなさんがさりげなく手伝ってくれて。押し付けがましくなく、かといって冷たくもなく、ちょうどいい距離感なんです」。では、困ったことは?「全くないですね」そう笑顔で断言するお二人が醸し出す心地いい雰囲気が店内に充満し、今度は絶対朝ごはんを食べに来よう、と誓った。
Info
新潟県佐渡市小木町1940-3 1階
Tel:080-2115-9996
営業時間:4月〜12月 7:30-11:00(L.O.10:00)、1月〜3月 8:00-11:00(L.O.10:00)(朝)
18:00-22:00(L.O.21:00)(夜)
休日:火、水、木(朝)/ 不定。前日12時までの御予約制(夜)
蕎麦 茂左衛門
Soba Mozemu
十割蕎麦を島ならではの食べ方で堪能する


「豊かな食材が佐渡の大きな魅力。地域性と季節性を工夫しながら、極力、地のものを使うようにしています」と、店主の齋藤和郎さん。東京の蕎麦店、和食、イタリアンで約10年間経験を積み、11年前に里帰りした生粋の佐渡っ子がつくる蕎麦懐石¥2,500は、平飼いの卵にあご出汁を加えただし巻き玉子からスタート。ふんわりとあご出汁の香りが口いっぱいに広がり、まさに口福。柿酢ときゅうりを合わせたみどり酢でマリネした鯵、佐渡産野菜の春巻きを藻塩でいただいたら、お待ちかねのお蕎麦。同店の名物「あごだしぶっかけそば」は、十割蕎麦の風味を、深みのあるつゆが優しく引き締める。江戸前とは違う、出汁文化が発達している佐渡ならではの逸品だ。天然の鬼ぐるみをすって蕎麦にかければ、力強い野生味がプラスされる。「ゆくゆくは島おこしがしたい」と語る齋藤さんは、島内のフレンチシェフやワインバー店主たちと共に、UMAMI Laboのメンバーとして活動している。佐渡の食材を使い、イベント等を通して佐渡の食を広める活動をしている。佐渡を知り尽くした店主が打つ蕎麦は、唯一無二の新しい出合いとなるはず。
Info
新潟県佐渡市新穂田野沢163-1
Tel:0259-67-7972
営業時間:11:30-14:00(L.O.13:30)(昼)/ 17:00-22:00(L.O.21:00)(夜)
休日:日(3連休の場合は日曜営業の月曜休み)
*完全予約制。前日のお昼までにご連絡を。
金福
Kinpuku
地元で愛され続ける焼き鳥の名店

創業から30年以上にわたり、焼鳥の名店として地元から愛される金福。備長炭で焼き上げる焼鳥は、定番メニューから日替わりまで多彩な串が楽しめる。ねぎま、梅しそ焼き、つくねの定番ものからトマトやニンニクの芽を豚肉で巻いた串焼きも人気。ここでしか味わえない変わり種のいなりチーズ焼きも人気なのだとか。また、ドイツ式ソーセージ&サラミの地元の有名店“へんじんもっこ”のソーセージも楽しめるのがうれしい。お酒は、島内の日本酒はもちろん、地ビールから焼酎、ワインまで一通りのお酒が味わえる。その日の気分や串に合わせてお酒を選べるのも魅力の一つだ。


Info
新潟県佐渡市相川2-9
Tel:0259-74-3934
営業時間:17:00-21:30
休日:日
ラ・バルク・ドゥ・ディオニゾス
La Barque de Dionysos
ナチュラルワインと佐渡の旬の食材を使ったフランス家庭料理


両津港から車で40分ほどの真野エリアにある。海のほど近くにあり、店内からは真野湾に沈む夕陽が一望できる。食材とワインにこだわり抜いたディナーがクチコミで話題となり、知る人ぞ知る名店。食材は畑で丹精込めて育てた野菜や地魚をふんだんに使用。振る舞われる料理にベストマッチなワインが提供される、こだわり抜いたディナーが人気だ。メニューはおまかせコースのみ。ぶどうの栽培から醸造工程まで、農薬や添加物などケミカルなものを使用せず、すべてを自然な作りにこだわったワインは島ではなかなか味わえない。予約は2日前までに。
VISIT
尾畑酒造
Obata Shuzo
廃校を活用した“サステナブル・ブリュワリー”


1892年創業の尾畑酒造は、2007年のインターナショナル・ワイン・チャレンジ大吟醸の部ゴールドメダル受賞を皮切りに、海外でも親しまれる日本酒を製造している。代表的銘柄「真野鶴」は、すっきりとした切れ味に島のおおらかさが加味された優しい飲み口で、国内外に多くのファンを持つ。
「海に囲まれている場所で育ったので、小さい頃から海の向こうに思いを馳せることが多くて。もっと日本酒を世界に伝えて行きたいと海外への輸出を早くからスタートしました。今では売上の約2割がアメリカやアジア、ヨーロッパです」と、尾畑留美子専務は言う。その尾畑さんが中心となって仕掛けたのが、本蔵とは別にある「学校蔵」だ。
廃校となった西三川小学校は、かつて「日本一夕日がきれいな小学校」と言われるほど、美しい高台に建つ。その建物を生かし、2014年から酒蔵として再生活用。酒米は佐渡の棚田で採れるコシヒカリ、副産物の酒粕や麹は施設内のカフェで発酵メニューとして提供、ソーラーパネルからの再生可能エネルギーを使用するなど、環境にも配慮した“サステナブル・ブリュアリー”として進化している。「山、里、川、海がハーモニーを奏でる佐渡の風土。その思いを込めて、<かなでる/KANADEL>というお酒を学校蔵ではつくっています」。
<pizzicato>は、その音楽用語の通り、弾むように軽やかな微発泡が爽やかな飲み心地を与えてくれ、海の幸と山の幸に祝福された佐渡の食とも相性がいい。ぜひお土産に買い求めたい。「学校と酒蔵は親和性があると思うんです。いつ行ってもそこにある、ランドマーク的な存在として原風景が広がっています。関わった人の母校のようになれたらいいなと考えています」
ゲスト講師を招いた1日限りのワークショップ、発酵食が楽しめるカフェ、テイスティングコース、視察コース、宿泊まで、学校蔵ではたくさんのプログラムやアクティビティが用意されているので、酒造りをさまざまな角度から学ぶことができる。
Info
尾畑酒造(株)本社
新潟県佐渡市真野新町449
Tel:0259-55-3171
営業時間:9:00-16:00(酒蔵SHOP)
休日:無休
*学校蔵(新潟県佐渡市西三川1871)の酒造り体験プログラムは2025年5月~9月に実施予定。詳細は専用フォームから。
ニカラ
Nicala
会話しながら本を選ぶというよろこびを


島の山間部に突如現れたコンクリートの建物。ニカラは、米山幸乃さんが営むブックストアだ。小豆島で書店の店長を務め、書籍の仕入れのノウハウを体得。夫であるタガヤス堂の米山耕さんが佐渡に移住したのをきっかけに、幸乃さんも島へ。
ただ、佐渡島は広い。車の免許を持たない彼女は知らない土地でだんだん塞ぎ込むように。そんなとき、心の拠り所となったのが本だった。「書店をやるために佐渡に来たわけではないんです」と振り返るが、移住して4年目経った今、とても楽しいという。
「書店を始めてから毎日が楽しくて。島内からお客さんが来るので、その人たちのために頑張ろうと張り合いが出ます。お客さんの中には書物に詳しい方もいて、教えてもらうことも。一方、社会のことや、不安を吐露しに来る方もいらっしゃって、佐渡の山奥でお店をやっていたとしても、みなさんが楽しいことも不安なことも話しに来られるような場所になるといいなと思っています。そういった存在は、自分にも必要でしたし、暮らしていく上で心強い。ラ・パゴッドのお二人のような開かれた人間になりたいですね」。
小説、写真集、評論、ZINE。幸乃さんがセレクトした書籍と共に文学談義をしてもおもしろい。きっと自分のお気に入りの一冊が見つかるはず。「ここは山間の小さな集落ですが、干渉されすぎることもないですし、ちょうどよい距離感で店を営むことが出来ています。適度に放っておいてくれるのは、信頼してくれているということだと思うので、ありがたいです」。その絶妙な距離感と信頼感。それはニカラという書店にも共通する魅力だ。
二ツ亀
Futatsugame
潮の満ち引きで風景が変化する絶景を目に焼き付けたい

両津港から約50分、佐渡の最北端にある佐渡島を代表する景勝地。「沖の島」と「磯の島」という2つの島が二匹の亀がうずくまっているように見えることからこの名前がついたのだそう。潮の満ち引きで景色が変わり、海水の透明度は佐渡随一を誇る。二ツ亀海水浴場は「日本の快水浴場100選」に選ばれていて、「大野亀」とともに、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で二つ星として掲載されている。シーズン中は隣接するホテルやキャンプ場などに泊まって海水浴が楽しめる。
Info
新潟県佐渡市 鷲崎
両津港から車で約 50 分 (駐車場60台)
バス停留所 二ツ亀 (内海府線) から徒歩 10 分
※2024年4月1日から、土・日・祝日の「内海府線」は、前日の17時までに事前予約が必要となりました。詳しくは新潟交通佐渡のホームページをご覧ください。
北沢浮遊選鉱場
Kitazawa Flotation Plant
近代遺産の象徴「東洋一の浮遊選鉱場」

かつて佐渡鉱山から採れた鉱石の処理場として建てられた「北沢浮遊選鉱場(きたざわふゆうせんこうば)」。遺された階段状のコンクリートに植物が生い茂るその姿から、映画『天空の城ラピュタ』の世界観を彷彿させると人気の観光スポットに。浮遊選鉱とは、鉱山で採掘された岩の中から鉱物を取り出す方法のひとつで、細かく砕いた鉱石を界面活性剤などの浮遊剤と一緒に水槽に入れてかき回し、泡とともに浮き上がったものを回収する。日本で初めて金・銀の採取に成功した施設だったそう。近年では観光シーズンにはライトアップも実施されるため、星空の下に映し出される幻想的な姿が人気に。
新潟県佐渡市相川北沢町3-2
Tel: 0259-74-2389(株式会社ゴールデン佐渡)
*ライトアップに関するお問い合わせは Tel:0259-67-7602(佐渡市観光振興部観光振興課 観光戦略係)まで。
BUY
T&M Bread Delivery
フレンドリーな店主が出迎える、ご機嫌なベーカリー

19時に寝て、0時に起きてパンをつくるというNY出身のマーカス・ソトさん。パーカッショニストだった彼が佐渡島へ移住したのは約30年前。佐渡コミュニティの中心的人物である彼が得意とするのは、カンパーニュやライ麦パンなどのハード系だ。店をオープンして間もない頃は、地元のお客さんに硬くてびっくりされたそうだが、今では年配の人ほどハード系パンのファンに。撮影中もお客さんがひっきりなしに訪れては、大量にパンを買っていった。また、西三川産のりんごをふんだんに使った名物のアップルパイは、酸味と甘味のバランスが絶妙。
「佐渡は昔の日本の風景が残っている」というマーカスさん。「今度は僕の別荘においでよ!」。こんなチャーミングな店主がつくるパン、美味しいに決まっている。
Info
新潟県佐渡市羽茂本郷634-2
Tel:090-3064-2880
営業時間:8:00-17:00(売り切れ仕舞い)
休日:月、火、水、木、日
おいしいドーナツ タガヤス堂
Tagayasu-dou
わざわざ訪れる価値あり! 山間に佇むドーナツ店

佐渡のブックフェス「HELLO!BOOKS」を訪れたことをきっかけに、島へ移住した店主の米山耕さん。大阪のドーナツ店「あたりきしゃりき堂」が佐渡に来る際、手伝った流れで自身も2016年、ドーナツ店をオープン。メインのドーナツはプレーンときび和糖。素材を最大限生かした素朴なドーナツは、何個でも食べたくなる飽きのこない味。その他に佐渡産のレモンを使用したレモングレイズやチョコレート、米粉で作ったカスタードなど季節によって異なる種類が登場する。元蕎麦店の一区画という店舗も、ドーナツ同様、素朴でノスタルジック。お隣のニカラと共に、ドライブがてら寄りたい美味しい店だ。


十千万
Tochiman
甘いもしょっぱいもOK。島歩きの熱々パートナー


散策中小腹が空いたら、佐渡産玄米粉を使った「めでたいやき」を。あんこ、あんこくるみ、ハムチーズ、ちくわ天(!)など、甘党も左党も大満足のたい焼きは、尻尾まで具がぎっしり。たらい舟乗り場と目と鼻の先なので、海を見ながら食べるのも一興。
Photo Gallery
Sado Island Map

佐渡は、美しい自然と豊かな食文化が魅力。東京23区の約1.4倍の面積を持つ本州最大の島。新潟県本土から佐渡島への往復は、佐渡汽船が運航するジェットフォイルやカーフェリーを使うのが基本。島内での移動は、港でレンタカーを借りるのがベスト。また、佐渡アウトドアベース、南佐渡観光案内所、きらりうむ佐渡の3カ所でレンタサイクルが可能だ。路線バスも充実していて、ゆっくり佐渡を巡りたい人におすすめ。
日本海に囲まれた佐渡の美味しいブリやズワイガニなどの魚介、佐渡のコシヒカリや日本酒は言うまでもなく、おけさ柿やビオレ・ソリエスと呼ばれる黒イチジクなどの果物、佐渡牛など挙げたらキリがない。美味しいものを食べ尽くすなら、料理のバリエーションも多いため最低でも2泊3日は滞在して欲しい。美味しいものを食べ、海沿いをドライブしながら景勝地を巡り、温泉に入って癒されるという贅沢すぎる食を軸とした島巡りがおすすめ。
あたたかい“ひと”が迎えてくれる佐渡は、季節ごとに通いたくなる素晴らしい場所。ぜひ一度足を運んでみて欲しい。
Day-trip ONSEN [Hot Spring] Information

Seasonal foods in Sado Island

The Best Souvenirs
フェリーターミナルにあるお土産屋では、島内にあるお土産屋や観光施設の売店がイチオシする品が集まっているため見るだけでも楽しめる。おすすめなのが佐渡島内で最大規模の直売所「新鮮空間よらんか舎」にはメイドイン佐渡が満載。地元の方から佐渡ならではのおみやげを求めて観光客も足を運ぶJAの直売所だ。
佐渡で生産された季節ごとのおいしいものが集まっていて、野菜やお米、鮮魚や加工品まで品揃えは多彩。ロングステイならば食材を買って料理しても良し。家に帰ってからのお楽しみに「お米」や「海産物」、島内で採れたフルーツを使用したジャムなどが人気。また、佐渡ならではの「いごねり」、「へんじんもっこのソーセージ&サラミ」、「佐渡の番茶」、「佐渡バター」など欲しいものがいっぱい。旅の最後のスケジュールに入れておきたいアドレスだ。
PHOTOGRAPHY: Yoko Takahashi
TEXT: Mika Koyanagi