OKI ISLANDS
島根半島の北40~80kmに位置する群島、隠岐諸島。4つの有人島のうち、西之島、中ノ島、知夫里島の3島を島前(どうぜん)、北東の大きな島を島後(どうご)と呼ぶ。ユーラシア大陸の一部だった時代があり、縄文時代にはすでに人類が住んでいたという古い歴史を持つが、現在の隠岐の原型は、約600万年前の火山噴火によって隆起したと言われている。その背景が物語る通り、隠岐の特徴は、なんといってもダイナミックな景観!
日本海の荒波によってつくられた摩天崖に代表される猛々しい海食崖は、他の場所では出合えない存在感。知夫里島の赤壁は、赤褐色の岩肌が1kmも続く大断崖で、見る者を圧倒し、地球の雄大さと力強さ、刻まれた時間を感じずにはいられない。
一方、後鳥羽上皇と後醍醐天皇が遠流された地として、また北前船の交易により、豊かな文化が醸成された土地でもある。カルチャーに興味がある人は、明治時代に来日し日本に帰化したギリシャ生まれのイギリス人作家・小泉八雲が隠岐を訪れた際に記した随筆『伯耆から隠岐へ』を読むのもおすすめ。独特の地形と豊潤な文化に彩られた隠岐の真髄は、島の至るところで感じられる。神社は150社以上あり、牛や馬が放牧され、樹齢数百年~数千年と言われる杉は島全体の御神木だ。樹齢2,000年の八百杉、600年のかぶら杉には神々しさが宿る。


もちろん、旅のお楽しみ、食も充実している。暖流と寒流が交わる隠岐近海で獲れる魚介、ブランド牛の隠岐牛、そば粉100%の隠岐そば、シマメ(スルメイカ)丼、さざえ丼など、ここでしか味わえないグルメが歓迎してくれる。和食に飽きたら、イタリアンのオーベルジュやコーヒー、ドーナツショップへエスケープ。どこもとびきりの美味しさだが、共通しているのは、地産地消であり、極限までシンプルに削ぎ落とされていること。24時間営業のコンビニもない。離島ゆえに物流がスムーズとは限らない。そんな中、島民たちは畑で野菜をつくり、釣りへ出かけ、醤油の代わりに自家製の小醤油味噌を拵える。何もない、選べないから工夫する。そして、ご近所さんへお裾分けし、移住者にはつくり方を優しく教えてくれる。本当の豊かさは、もしかしたらこういうことなのかもと思うほど、人の営みがあたたかい。地形、食、動物、すべてが根源的。ほとばしる生命力と、研ぎ澄まされた本質が鮮やかなコントラストで描かれる、それが隠岐諸島の魅力だ。
STAY
Entô
Entô
ジオパークの入り口で、最高の滞在空間を


隠岐諸島の有人島は、島前(どうぜん)と島後(どうご)に分かれる。その島前の玄関口、中ノ島・海士町一番の立地にあるのがEntôだ。2021年、隠岐ユネスコ世界ジオパークの“泊まれる拠点”として生まれ変わった、旅人と島で暮らす人々が交流する場を創出している。建物は「Entô Annex NEST」と「Entô BASE」の二つの棟から成り、全36室はすべてオーシャンフロント。窓枠を大きくとった部屋からは島前カルデラが望め、ベッドやチェアの上から景色がシームレスに繋がる。窓から見える景色にこだわり、建物の位置配置配置を1度ずつ検証したというこだわりよう! まるで海に浮かんでいるような感覚で、目の前に広がる手付かずの地球を眺める。行き交う船をぼうっと見たり、昼寝したり。そんな時間こそが最高の贅沢。スイートルームには、ワインや葡萄シュースなどのウェルカムドリンクが用意されている。
島の成り立ちに興味を持ったら、1階ジオラウンジへ。真っ白に塗られた島前の自然を表現したオブジェが並ぶ展示室Geo Room“Discover”で島の歴史や地形、生息する動植物について予習することが可能だ(ちなみに白く塗られているのは、実際に自分の目で確かめてほしいという思いが込められているため)。毎日16時からは解説員による説明「Entô WALK」も実施されているので、より深く知りたい人はぜひ参加してほしい。また、町営中央図書館の分館があり、客室以外はパブリックスペースという開放的な空間で、地元住民と触れ合うのもいい。
OkiBase
OkiBase
観光とビジネスの拠点となる、離島のサードプレイス
人口約2,500人の島前最大の西ノ島は、摩天崖や通天橋など隠岐を代表する観光スポットがあるにも関わらず、宿泊施設が少なかった。ワーケーションとしての可能性を感じ、その拠点を作りたいと2026年1月に誕生。築100年超の古民家をホテル&カフェとしてリノベーションした空間は、どこかホッと落ち着く。聞けば、西ノ島の大工や海士町役場も担当した松江の設計会社が参加し、もともとあった柱を生かしつつ、現代のデザインに仕上げているそう。部屋にはデスクとモニターを備え、テレワークにも最適。連泊すると割引になるサービスがあるため、長期滞在するにはもってこい。1階にはプルドポークバーガーやホットドッグなどが食べられるカフェがあるので、島めぐりのひと休みにも。


国賀荘
Kunigasou
高台に建つ、ノスタルジックで心地よい宿
浦郷地区の高台に位置するこの宿は、どこか懐かしさを覚える外観と、美味しい海鮮料理が自慢。客室からは窓いっぱいに広がる西ノ島の海。展望風呂からも海を眺めながらゆったり浸かれるから、旅の疲れも吹き飛ぶはず。夕食は名物の岩牡蠣や近海で獲れた魚など、たっぷりと島の美味を堪能。朝食は、隠岐産アラメの佃煮や日本海産のどぐろの干物をおかずに、山陰産の炊き立てごはんで朝から元気に。また、2024年に誕生したオーシャンビュー 半露天セミスイート ヂナカチ「jinakachi」は、半露天風呂付きの一部屋だけのスイートルーム。漁船で使われているライトを使用したり、地元焼火窯で泥染めしたファブリックをフットスローに採用するなど、随所で島の息吹が感じられる。


新屋敷
Shinyashiki
1日1組、1棟貸切りの泊まれるトラットリア
西郷港から車で30分走ると、人口わずか30人ほどの伊後集落に着く。この隠岐諸島最北端の高台に位置する約3000㎡のプライベートエリアが、1日1組限定のオーベルジュ、新屋敷だ。築120年の古民家をフルリノベーションし、島根県で生産されている石州瓦の赤い屋根の母屋と、島の伝統的な技法を生かした石造りの庭が優しく出迎える。玄関を入ると、広い土間とキッチン。リビングには古材を使った本棚や隠岐杉のフローリングがあたたかな滞在を予感させる。気になる料理は、ゲストのために考えられた一期一会のイタリアンフルコース。
それぞれ静岡と兵庫から移住したオーナーとシェフが、「食を大切にする、自分が泊まりたい宿」を求めて辿り着いた隠岐は、食が豊かだという。「冬が厳しいため、保存食が発展し、火山性の土壌ゆえに、育つ野菜や獲れる海産物の種類も多くはない。でも、選べないからこそ豊か。隠岐の人は旬のものの美味しい食べ方をよく知っているんです」。野菜も土作りから自分たちで始め、畑の師匠によって自家菜園の素材も豊富になった。「米農家から米糠をもらったり、夕方歩いていると魚をもらったり。人がいいのも隠岐の魅力です」。四季折々、島のエネルギーを詰め込んだ特別な食事を楽しんだら、満天の星空、朝日の綺麗さを再認識。ファイアーピットで焚き火をしながら一晩中語り合ってもいい。朝晩ともに食事開始時間の1時間前までスタッフも立ち入らない、完全プライベートな空間で、とことんリラックス。人間の根源である美味しい食事を堪能し、静謐な時間を過ごす。本当の豊かさとは何かを感じられるステイになるはず。
Info
島根県隠岐郡隠岐の島町伊後636 Oki Islands Map④
Tel:080-3063-3473(9:00〜19:00まで)
ACTIVITY
国賀めぐり定期観光船
Sightseeing Boat
圧巻の大自然を楽しむ、絶景クルージング


隠岐諸島の醍醐味、ダイナミックな自然は観光船から見るのがおすすめ。浦郷港から国賀海岸をめぐるAコースは、1時間20分をかけ、摩天崖や通天橋、天上界を間近に見ることができる。荒天時には1時間の船長のおまかせコースに代替される。船から剥き出しの自然を味わって。


EAT & DRINK
青とあいら
Aotoaira
リラックスした空間で楽しむ、とっておきの島の恵み


大阪や松江など6軒の鮨店で修行した職人が始めた宿。1階ではランチタイムに海鮮丼を、夜は本格的な鮨や旬の魚を使ったつまみが楽しめる。例えば、夜にいただく、お造りのひらまさ、鯵、鮪、タコはすべて隠岐で獲れたもの。握りで出される西ノ島であがったイカはねっとりと甘い。息子の名を店名に関した大将と話しながら、美味しい鮨と地酒に舌鼓を打ちたい。
Info
島根県隠岐郡西ノ島町浦郷211-1 Oki Islands Map⑥
Tel:090-7540-0547
営業時間:11:30〜13:30、18:00〜21:00(飲食店)/
チェックイン15:00〜、チェックアウト10:00〜
*夜のコースは完全予約制。前日までに予約を。
休日:月
鮨陸
Sushi Riku
隠岐に魅了された職人がもてなす、豊かな鮨と時間


菱浦港近くに2025年オープン。隠岐の豊かな自然や歴史に魅せられ、移住してきた職人、谷本陸さんが営む。そんな海士町の魚介を知り尽くした陸さんが握るお寿司には、一貫一貫に丁寧な仕事と工夫がほどこされ、隠岐の旬の恵みを存分に感じることができる。カウンター7席の居心地のいい店内で、職人技を間近で見ながら、隠岐の握りやサザエの飯蒸しをゆるりと楽しみたい。
船渡来流亭
Central Tei
港に着いてひと息入れる、開放的な溜まり場
海士町の玄関口、菱浦港のフェリーターミナル「キンニャモニャセンター」2階にあるレストラン。プリプリの岩牡蠣など地元食材を使った一皿に心躍るが、スルメイカを使った名物シマメ漬け丼を食べるのを忘れずに。隠岐諸島の食材を使った月替わりのお魚、お肉プレートも魅力的。大切にしているのは、「Farm to Table“農場から食卓へ”」。海士町で獲れた食材を使い、生産者へ経済的に還元することを目指している。「“拓く”をコンセプトにもっと開いていこう。レストランだけど、いろいろな人が集合する場所に」との思いで、「美味しいで繋がる日常の場所」を提供している。オードブル需要やヴィーガン弁当にも対応するなど、フレキシブルに広がり続けるのも魅力だ。


Info
隠岐郡海士町福井1365-5 キンニャモニャセンター2階 Oki Islands Map⑧
Tel:08514-2-1510
営業時間:11:00〜14:00(ランチ)、14:00〜16:00(カフェ)
休日:なし
島生まれ島育ち 隠岐牛店
Okigyuten
“幻の黒毛和牛”隠岐牛に愛情を注いだ専門店で舌鼓
その名の通り、隠岐で生まれ育った隠岐牛が食べられる専門店。隠岐牛の生産から販売、調理まで一貫して行っているため、昼は隠岐牛3品盛ランチが2,000円とリーズナブルに堪能できる。夜は焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きなどを地酒と共にどうぞ。精肉店も併設(全国発送可能)。
ラディーチェ
Radice
旬の食材を日替わりで楽しめる、地域密着型イタリアン
海士町出身のいとこ同士である、オーナーシェフ桑本千鶴さんと、ソムリエ升田由美子さんが営むイタリアンレストラン。化学調味料を使用せず、地元の食材を活かした料理が楽しめるが、ユニークなのは、田舎をコンセプトにしていないこと。松江や東京、フィレンツェで修行したシェフが作るメニューは日替わり。例えば、3月のある日は、海士町の有機野菜農園「ムラーズファーム」新じゃがいものパンナコッタ 2種のチーズソースから始まり、魚貝のラグー、ふきのとうの香、クロヤの香草パン粉焼、甘夏のセミフレッド。自家製パンも美味。観光客にはもちろん、地元住民からも愛されるのが納得の名店だ。


Info
島根県隠岐郡海士町大字福井968-1 Oki Islands Map⑩
Tel:08514-2-1278
営業時間:13:00〜16:00(ランチ、土曜のみ)、14:00〜16:00(カフェ)、
18:00〜22:00(ディナー) *ディナーは前日までに、隠岐の食材をすべての皿に使った
OKIコースは3営業日前までに予約を。
休日:日、月
サンライズコーヒー
Sunrise Coffee
自分好みのコーヒーを、海を見ながら飲む贅沢
目の前は海! 絶好のロケーションで、自家焙煎コーヒーと米粉のお菓子が楽しめる。丁寧に淹れられたドリップコーヒーとクルミがざくざく入った名物エンガディナー・ヌストルテの相性は抜群だけど、濃厚な抹茶のアフォガートもおすすめ。店内の通り、朝の時間を満喫できる月1モーニング(要予約)も訪れたい。ドリップバッグも販売しているので、お土産や旅の思い出に買い求めても。


VISIT
摩天崖
Matengai
海抜257mのダイナミックな景勝地
隠岐を代表する景勝地、摩天崖。波の侵食により形成された海抜257mの大絶壁は、まるで巨大なナイフで垂直に切り取ったよう! 約600万年前に起こった火山活動の記憶が感じられる。一方、周辺一帯の放牧地では、牛や馬がのんびり草を喰む、牧歌的な風景が広がる。荒々しさとファンタジーが同居する、唯一無二の場所だ。体力に自信のある人は、国賀海岸の摩天崖遊歩道をハイキングしたい。摩天崖から国賀浜へ繋がる約2.3kmの途中では、アーチ状の奇岩、通天橋を一望できる。春から秋にかけては、オキタンポポ、オキノアザミといった隠岐固有の草花が咲く。大自然の造形美に圧倒される、隠岐旅のハイライトだ。


三大杉
3 Cedar Trees
悠久の時に思いを馳せる、神聖なる杉
島後に残る、全国でも数少ない杉の天然林。それらは約2万年前の氷河期に、本土と陸続きになった隠岐に避難した杉の子孫たち。中でも特に見ておきたいのが、岩倉の乳房杉、かぶら杉、玉若酢神社境内にある八百杉の三大杉だ。樹齢約800年という岩倉の乳房杉は、15本に分かれた幹から大小24本の根が垂れ下がり、特異な姿を現す。山の奥まった場所にあるので、道中の運転には気をつけたい。国道485号沿いにあるかぶら杉は樹齢約600年。根本付近から6本の幹(かつては12本あった)に分かれた巨木だ。八百杉は国指定天然記念物で、樹齢なんと約2,000年! 800歳まで生きた八百比丘尼が植えたといる伝説が残る。旅人たちのはるか昔から生き続ける荘厳な木々からパワーをもらおう。


Info
岩倉の乳房杉
島根県隠岐の島町布施 Oki Islands Map⑬a
かぶら杉
島根県隠岐郡隠岐の島町中村 Oki Islands Map⑬b
八百杉
島根県隠岐郡隠岐の島町下西701 Oki Islands Map⑬c
Tel:08512-2-7170(玉若酢命神社)
赤壁
Sekiheki
1km続く、大迫力の赤い岩肌と断崖絶壁
人口約600人、面積13.7㎢の小さな村、知夫村。なんといっても知夫里島の西海岸におよそ1kmも続く断崖、赤壁に圧倒される。噴火活動の痕跡である、えぐられた赤褐色の岩肌はドラマティックの一言。国の名勝、天然記念物に指定されているほど貴重な景観だ。紺碧の海と赤壁のコントラストが美しい夕日の時間が人気。車でも行けるが、おすすめは遊覧船。海から眺め、大迫力を体験したい。
壇鏡の滝
Dangyo Waterfalls
スピリチュアルな空気に包まれた、山の絶景


「日本の滝百選・日本名水百選」のひとつ。岩壁の左右に高さ約50mの雄滝と40mの雌滝が流れ、2つの滝の間には壇鏡神社が鎮座する。鳥居をくぐると両側に老杉が立ち並び、厳かで神秘的な雰囲気が漂う。松尾山光山寺の二代目住職が夢のお告げにより見つけたという逸話も。約800年の歴史を持つ牛突きや隠岐古典相撲大会に出場する島民たちが直前にこぞってこの水を求め、またこの地に長寿者が多いところから、「勝利の水」「長寿の水」として信仰されてきた。駐車場から本殿までは徒歩5分ほど。那久川のせせらぎを聞きながら、心地よく歩きたい。
Info
島根県隠岐郡隠岐の島町那久 Oki Islands Map⑮
西郷港より車で約50分
ローソク島
Candle Island
島の先端に火が灯る、ロマンティックな奇跡
島後を代表する景勝地。高さ20mの細長い岩に夕日が重なると、まさにローソクを灯したような姿に。晴天の波が穏やかな日にしか現れない奇跡の光景は、遊覧船から見よう。天候次第では見られない、コントロール不可な自然の醍醐味を感じたい。
Info
島根県隠岐の島町代 Oki Islands Map⑯
Tel:08512-2-0787(隠岐の島町観光協会)
*運行は4月1日〜10月31日まで。遊覧所要時間は約50分。出航は日没時間により変動。隠岐の専用アプリ“エルクール”または観光協会からの予約が必須。
水若酢神社
Mizuwakasu Shrine
長い歴史と伝統を感じさせる、隠岐国一宮
延長5(927)年にまとめられた日本最古の神社リスト、延喜式神名帳に最上格の名神大社として記される、隠岐国一宮。隠岐の国土開発と日本海鎮護を担った神様、水若酢命を祀る。寛政7(1795)年に建てられた隠岐造りの本殿は国指定重要文化財。西暦偶数年5月3日には子どもが山車をひく、無病息災を願う水若酢神社祭礼風流が行われる。
Info
島根県隠岐郡隠岐の島町郡723 Oki Islands Map⑰
Tel:08512-5-2123
伊勢命神社
Ise-mikoto Shrine
格式高い神社で夜通し奉納する久見神楽を
photo by(一社)隠岐ジオパーク推進機構
西日本最大の黒曜石の産地である久見集落の氏神、伊勢命が御祭神。延喜式神名帳に名神大社として記される、隠岐四大社のひとつ。7月の例祭では、県指定無形民俗文化財である久見神楽が夜を徹して奉納される。
国賀神社
Kuniga Shrine
国賀海岸の岩場に建つ、海の守護神
日本海の海洋侵食によるダイナミックな風景に圧倒される国賀海岸。その岩場に建立された国賀神社は、西ノ島の発展と安全祈願が込められている。とがった岩場に鎮座しているため、歩きやすい靴で出かけよう。昭和58年創建と歴史は浅いが、大自然の中に佇む姿は、神々しく海の安全を守っている。御朱印は別府港にある観光協会窓口まで。


由良比女神社
Yurahime Shrine
漁業神、海上守護神として信仰を集める古社
平安時代に隠岐国一宮に定められた、隠岐四大社の一社。神社前は浅い入り江となっており、「イカ寄せの浜」として知られる。御祭神である由良比女命の手をイカが噛んでしまった無礼を詫びるために、毎年秋になるとイカの大群が押し寄せることになったという伝説が残る。
焼火神社
Takuhi Shrine
焼火山に鎮座する海上安全の神
島前の最高峰、焼火山(海抜452m)の中腹にある神社。御祭神は大日霊貴尊(おおひるめむちのみこと)。創建は西暦1000年頃とされ、1732年に改築された社殿は隠岐最古の木造建築であり、国指定重要文化財。日本海の舟人の海上安全の神として崇められてきた。安藤広重や葛飾北斎の浮世絵「諸国百景」にも描かれたほど、古くから信仰を集める。大岩窟からせり出すように建てられた社殿が圧巻だが、辿り着くまでに急な坂を2kmほど登る必要がある。遊歩道は神域植物群に指定され、さまざまな植物が見られるが、マムシが生息しているので注意。
隠岐神社
Oki Shrine
隠岐の歴史を語る上で欠かせない、海士町のシンボル
承久の乱に敗れ、海士町に配流された後鳥羽上皇の崩御700年に合わせて創建。隠岐造りと呼ばれる伝統的な建築様式が重厚で厳かな雰囲気に。56,000㎡という広大な境内には桜並木が続き、参拝客を本殿へと誘う。神社の前には、後鳥羽上皇に関する資料や隠岐神社に奉納された刀剣を展示した後鳥羽院資料館があるため、海士町の歴史や伝統をより深く知ることも可能だ。
BUY
京見屋分店
Kyomiya Bunten
島愛あふれるオーナー夫妻が案内する隠岐旅のはじまり


西郷港のすぐ近く。センスのいい雑貨とお土産物店を販売する京見屋分店は、オーナーの祖父が80年前に営んでいたお茶の量り売り店をリニューアル。隠岐諸島が初めてと伝えると、「ばくだんおにぎりと隠岐そばがおすすめ」「サザエ丼も食べてほしい!」「知夫里島の赤壁は絶対見てほしい」と、島のガイドのように次から次へとおすすめを教えてくれた。まさに隠岐諸島旅行のスタート地点。オーナーが淹れるコーヒーと共に旅の予定を立てるのもいい。店には、柑橘が香る「おきのしましまビール」や地元の食材・出西窯や天野紺屋の藍染小物がそろう。2階にはワークスペース「風待ちoffice」もあるため、旅行中のちょっとした仕事も気持ちよくできそう。看板犬のコーギー犬、テンてんちょうが時々お出迎えしてくれるのもうれしい。
お土産と手仕事のお店 つなかけ
Tsunakake
「これが海士町だ!」がそろう、気軽に立ち寄りたい土産店


後鳥羽上皇を祀っている隠岐神社の目の前にある土産店。海士町銘菓「白浪」を製造する本店でもあり、名物「キンニャモニャ饅頭」など地元の菓子が豊富にそろう。島民に親しまれてきた健康茶「ふくぎ茶」や、隠岐神社に奉納された地産の「隠岐國海士乃塩」もお土産にぜひ。地元作家による手仕事の作品も販売しているので、たっぷり時間をかけて選びたい。店内にはゆっくりとくつろげるカフェスペースも併設。旅の合間にほっと一息つけるスポットとしてもおすすめ。
木村屋
Kimuraya
焼きたてがうれしい町の人気ベーカリー
ストライプの庇がかわいいお店は、2023年に現在の地でリニューアルオープン。塩ぱん、あんぱんなど昔ながらのパンも人気だが、代表選手は、隠岐の島町産の藻塩と米粉を使用した藻塩バターベーグル。他に海老カツバーガーやチーズバーガーなど、お腹を満たしてくれるパンもラインナップ。厨房ではさまざまな年代のスタッフが和気藹々とパンを作っていて、見るだけで和む。優しさと懐かしさがギュッと詰まった、毎日食べたくなる味。
Photo Gallery
Oki Islands Map
日本海に浮かぶ4つの有人島からなる隠岐諸島。それぞれの島がまったく異なる個性を持ち、巡るほどに多層的な魅力が見えてくる。大きくは北東の「島後(どうご)」と、西側に集まる「島前(どうぜん)」に分けられる。島前は、西ノ島、中ノ島(海士町)、知夫里島の3島が内海を囲むように並び、火山活動によって形成されたカルデラ地形が特徴的だ。
一方、隠岐最大の島である島後は、豊かな森や滝、歴史的な町並みが残る、よりスケール感のある島。西ノ島にある摩天崖は、火山活動と日本海の荒波が生んだ圧倒的な断崖絶壁。牛や馬が駆け回り、霧に包まれる草原は、どこか異国めいた風景だ。後鳥羽上皇ゆかりの歴史と文化が色濃く残るのが中ノ島(海士町)、赤壁や放牧風景など素朴で静かな自然を味わえるのが知夫里島。そして島後には、隠岐の玄関口となる港町、古代から続く歴史、深い森と清流が広がっている。
また、この旅で欠かせないのが“食”。寒流と暖流が交わる海で育った岩牡蠣、白イカ、サザエ、隠岐牛など、島には豊かな食文化が息づいている。特に岩牡蠣は、濃厚でクリーミーな味わいが特徴で、夏の隠岐を代表する味覚。さらに、古くから受け継がれる郷土料理や、島の湧水、日本酒などを味わうことで、その土地の暮らしや歴史までも感じることができる。
自然、文化、信仰、そして食。それぞれが濃密に結びついている隠岐諸島は、2泊3日ほど滞在すれば、単なる観光ではなく、“島の時間”そのものを体感できる旅先だ。
Seasonal foods in Oki Islands
Travel Essentials
隠岐の旅を語るとき、島と島をつなぐフェリーの存在は外せない。4つの有人島に分かれた隠岐諸島では、フェリーや高速船をどう使うかが、旅の快適さを左右する。限られた日数で効率よく巡るなら、島前と島後をどう組み合わせるかがポイントだ。
もっともバランスが良いのは、2泊3日で「島前+島後」を巡るルート。まず本土からフェリーで島前へ入り、内航船を使って西ノ島、中ノ島(海士町)、知夫里島の3島を巡る。3島は比較的近距離にあり、船の本数もあるため、日帰り感覚で動きやすい。その後、高速船やフェリーで島後へ。隠岐最大の島である島後は、森や滝、歴史的な町並みなど、スケール感のある自然が広がる。旅の締めくくりに訪れると、旅全体に奥行きが生まれる。
荷物の扱いにも工夫を。島前のどこかに1泊して身軽に動く、あるいは本土からレンタカーをフェリーに乗せてしまうのが一番おすすめだ。そうすれば最後まで同じ車で動けるため、荷物を積んだまま島を渡れる。島ごとにレンタカーを借り直す手間もない。
フェリーの移動時間そのものも、この旅の一部だ。デッキに出て海風を感じながら、島影を眺めて次の島へ向かう時間は、単なる交通手段ではない。都市的な「最短距離」の感覚を手放し、少し余白を持ったスケジュールで動くと、隠岐らしい時間を楽しめる。
フェリーターミナルには小さな売店や特産品コーナーがあり、出発前の最後のお土産探しも楽しい。島の写真集やローカルマップ、小冊子など、風景を持ち帰るようなものも多く、旅の記録にちょうどいい。BUYで紹介している京見屋分店やつなかけでは、隠岐の藻塩や干物、海藻加工品なども手に入る。
PHOTOGRAPHY: Shiori Ikeno
TEXT: Mika Koyanagi
ILLUSTRATION: Tomoko Nishio



























