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URARA
TSUCHIYA
Artist ISSUE 1 2024 SS

グラスゴーを拠点に活動する日本人アーティスト、土屋麗は、陶芸作品を中心にパフォーマンス、映像、写真家とのコラボレーションによる写真作品など幅広い形式で作品を発表している。ユニークな作風で、明快なモチーフを手描きした陶磁器が印象的だ。非凡でユーモラスに満ちた世界を表現した作品は、人が無意識の中に抱えている世界観と日常の間に生じる矛盾、ジェンダーやセクシュアリティをはじめとした社会集団におけるルールを問い直している。彼女はアーティストとしてどんなことを日々考え、なにをつくり、伝えていきたいのか。作品はどのようにしてできるのか、その制作意図を聞いた。

2023年7月に日本橋馬喰町にあるギャラリー・パーセルで行われた展覧会で発表したボウル『Manatee』と木のライト、『NightTree』は、信楽焼のアーティストレジデンス(滋賀県立陶芸の森)にて滞在制作を行ったもの。轆轤で器や壺を作り、そこに「立体的なものを足したら面白い」と始まったこのアイディアは、もともとの発想をたどると、彼女が昔、祖母から見せてもらった「博多人形の裏返し」に遡る。座布団の上に猫が乗った可らしい人形を裏返すと春画が描かれているというもの。その時感じた表と裏の二面性にインスピレーションを受け、その頃の記憶から少しずつ今の作風が作り上げられたと言う。さまざまな性別の組み合わせでのセックスの様子が描かれた器は、「こういうお皿でゴハンを食べたら、なんか最後気まずい」という発想からいたったもので、たくさんのアイディアが盛り込まれ「気まずい」ムードを纏わせている。

また、本物であるかのように細部まで繊細に作り込まれた下着シリーズは、去年山梨県北杜市に滞在中に制作した新作だ。実物の下着が存在し、それをもとに粘土で縫い物をしているのと同じような感覚で作られている。作品についてのこだわりは、「制作過程でいろいろ考え、アイディアを足していくので、1日では完成できない。土が乾いてしまわないように毎日丁寧に管理することが必要。何より完成までのプロセスを大事にしている」という。見る者を釘付けにしてしまう彼女の作品が持つメッセージとは何か。「説明するほど特別なものがあるわけではないけれど、その時自分が感じていること、考えていることは当然作品に反映されている」。彼女にとって作品のアイディアは、友人から聞いた話や自分の経験によるもので、発表する作品はあくまでパーソナルに近いものとして捉えている。

社会や環境が作品に与える影響については、「生きているかぎり所属している社会や環境には少なからず影響を受けていると思う。だから、アーティストとして社会に対して、意見はあるべきで、自分の意見を発信したり、その中で意思を決定したり、道を決めることをしないと自分ではなくなってしまう」のだと。土屋麗は、アーティストとして自分自身や社会と向き合い、自分らしくいるために作品を制作し、作品を通して社会に対する皮肉や問題提起することで表現している。

パソコンの画面越しに見せてくれた信楽焼のシンプルで美しい形の白いカップでお茶を飲みながら、最近は、「パレスチナのニュースばかり見ていて、展覧会に向けて作品を作らなくてはいけない時期なのだけど、やる気が全然出なく、日常生活に支障をきたしてしまうほど」なのだと今の心境を教えてくれた。1人でニュースを見ていても辛い気持ちが増すばかりで、海外から遊びに来ている友達とデモに参加するようだ。「文化とか環境とか住んでいるところによって違うけれど、人は何かのために立ち上がらないといけない。時には経済活動より、大事なものがあるのではないか」と真剣に伝えてくれた。

今まさに「写真家のBen Tomsとお互いアイディアを出し合って写真作品を作る準備中で、彼からものすごい量のリファレンスが送られてきていて、それをもとに衣装を制作するところ」だと言う。彼女は、衣装制作も自身でパターンを引き、生地選びもし、すべての工程を1人でこなしている。これからの近い未来で考えていることは、「映像を作りたい。さらに自分のいろいろな作品を使ってインスタレーションで表現することができたら面白い」と実現に向けて日々頭の中にあることを具現化していくようだ。

そのパワフルな行動力はどこから来るのか。「みんなが毎日働いているように、作品を作っていないと無職な人みたいな感じがしちゃう」と私たちが日々仕事をしていることと変わりなく作品を作ることが彼女にとっての日常なのだ。個性があまりない、横並びの時代で、アーティストとしてどう表現していくのかを日々考え、また自身も女性であることから、女性が個人でも社会集団としても自立的な力をつけることを望んでいる。そして、「人は誰一人として同じ人はいなくて、みんな違うのが普通のこと」なんだと、至極当たり前だが大事なことを改めて教えてくれた。

URARA TSUCHIYA

日本、大阪生まれ。グラスゴーを拠点に活動中。グラスゴー美術学校でMFAを取得し、ロンドンのゴールドスミス大学で美術を学ぶ。 彼女の作品は、Frieze London(イギリス)、GlasgowInternational(イギリス)、Trade Gallery(イギリス)、 Union Pacific(イギリス)などの注目の展覧会で展示されている。4月からロンドンのUnion Pacificでの個展、NYにあるMuseum of Sexでのグループ展にも参加。

PHOTOGRAPHY: Yuto Kudo
INTERVIEW: Reiko Ishii

PHOTOGRAPHIC ASSISTANCE: Yoshimi Horinouchi

Questionnaire

1

あなたは何をしている人ですか?

アーティストです 。

2

あなたの仕事で一番好きなことを教えて下さい。

制作の過程とかいろんな国に行けるチャンスがあること。

3

今の仕事をする上できっかけになったことはなんですか?

大学・大学院が現代美術だったため。

4

これまで最も影響を受けた人物は誰ですか?
その理由も教えてください。

母かな? 頭が柔らかくて現実主義なところ。

5

あなたを3つの言葉で表すと?

現実主義、想像力豊か、悲観的

6

今一番興味のあることは何ですか?

イスラエルのパレスチナへの即時停戦・大虐殺がなんとか止まって欲しいので、自分にも何かできることがあるのかということ。

7

これなしでは生きていけないもの3つ

パスポート、友達、携帯 

8

いつも必ず持ち歩いているものは?

携帯、鍵、クレジットカード

9

モーニングルーティンは?

朝起きてまずはコーヒーを飲みながら一服。そしてベッドに戻り、壊れた携帯をひたすらスクロール。前日の夜洗顔をし忘れていたら、二度寝する前に済ませる。

10

好きなカクテルもしくは飲み物は?

ワイン、メスカル、日本酒、パロマ、マルガリータ、スプリッツ

11

時間を忘れるほど夢中になれることは?

制作かな?

12

あなたにとって最高の贅沢は?

制作に必要なツールが全て揃った日当たりのよい広々としたアトリエを持つこと。常に友達とその空間にいられたら最高。 

13

刺激を受けるのはどんなとき?

展示を観に行ったとき、旅行に行ったとき、友達と一緒にいるとき。

14

一番好きな色は?

15

好きな味は?

柚子胡椒、シナモンとか薬味、スパイスの味

16

人生で最も重要な決断は何ですか?

17

人生で最も感動した瞬間は何ですか?

最近行ったパレスチナのデモの時にイギリスで育ったパレスチナ人の大学生のスピーチ 。

18

最近読み終わった本は?

魔女と聖女 / 池上俊一

19

好きな作家は誰ですか?

20

本棚にある本で好きなものを3つ教えてください。

『モンキー・ワイフ』 ジョン・コリア

『O嬢の物語』 ポーリーヌ・レアージュ

『ザ・ グリーン・ チャイルド』 ハーバート・リード

21

今旅するならどこに行く?

メキシコ 

22

行ってみたい国は?

ラテンアメリカ 

23

お気に入りの宿は?

パリで友達が泊まっていたガラス張りのシャワーが部屋にある高そうなホテル。

24

最も印象に残っている場所は?

25

あなたのホームはどこですか?

26

最近よく聴いている音楽は?

NTS radioというインターネットラジオ聴いています。

27

好きなミュージシャンは?

28

どの曲ならずっと聴いていられる? 

29

好きな映画を3つ教えてください

ファスビンダー監督の作品、

『邪淫の館 獣人』

『本当に若い娘』

ザ・ベイビー/呪われた密室の恐怖

30

最近観た映画で好きだったものは?

少し前にエディターの友達と『関心領域』を観ていましたが、10分で寝落ちてしまった。

31

初対面の人に対して最初に目がいくポイントは? 

本心で話す人かそうでない人か 。

32

友達に会った時のあいさつは何?

元気?

33

人から受けた最善のアドバイスは?

自分の価値は自分で決める。

34

寝る時に着るものはなんですか?

前の日に着ていた服、コートも着ている時があります。余力ある時はTシャツと下着 。

35

あなたのモットーは何ですか?

道徳的に間違っていなければなんでもあり。そして、笑うことが大好きだし、友達を笑わせるのも大好き。

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