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ayaka endo
photographer ISSUE 1 2024 SS

昨年、写真集『Swaying Flowers』を発表したayakaendo。東京藝術大学在学中に制作した作品をリメイクした同作は、スナップ感覚で撮られた花々を布に転写、さらに布を切り刻み、二次元の表現に立体的な手触りを加えている。愛らしく可憐な花々は、ブレや白飛びなど、生々しさをまとう。彼女が写真を撮る理由とは。

「中学生の頃から写真が好きでした。女子校で友人たちはみんな可愛かったし、10代のエモーショナルな時間をカメラに収めていました。大学ではデザイン科を専攻。学生の頃からデザインの仕事を少しやっていましたが、なんとなく雑用をしているような気持ちになり、ちょっと違うかなと。就職したい会社もなかったですし、何もしないまま時間が過ぎてしまい、卒業制作で写真を選びました。その卒業制作をたくさんの人に見ていただいた結果、写真の仕事が来るようになったんです」大学入学後も友人たちを撮っていたが、作品というには程遠く、写真の教授や先輩たちからも評価が芳しくなかった。卒業前に写真と向き合おうと、大学を休学する。そして、新型コロナウイルスが蔓延し、外出もままならない日々に。「そこで写真を作品としてどう成立させるかをじっくり考えました。今までは日常を撮っているだけだったのを、ちゃんと目的を持って撮りに行こうと決めて。コロナじゃなかったらそうは思わなかったかもしれません」

被写体にじっくり向き合うことは、瞬間を切り取る写真の第一義とは日常を離れる気がするが、花のシリーズだけはスナップ感覚でよく撮っていた。iPhoneでもフィルムカメラでも一眼でもチェキでも、写真機はバラバラだが、花は撮り溜めていた。ロバート・メイプルソープしかり、アーヴィング・ペン、荒木経惟、鈴木理策など、洋の東西を問わず、花を被写体に選ぶ写真家は数多くいた。彼女が花をモチーフに選んだのはなぜだろう?

「振り返ると、ジェンダー的なことと絡めていて。今は精神的にも安定しているし、女性らしくするべきといったことは1ミリも思っていないけれど、10代〜20代前半は結構不安定で、ステレオタイプに苦しめられたというか。最近はもっとオープンですし、言語化されてきていますが、当時はただ悶々とするしかなかった。その思いを花に重ね合わせていました。花も女性も見られる側として評価されてきた。特に切り花は、女の一生みたいな感じで美しいけれど悲しいみたいな複雑な気持ちもありました。だからこそ、布にプリントして傷をつけたのかもしれません。当時の自分を押し花のように留めているようで、今とはまったく違う自分が作ったものという感覚です」

花というモチーフ選びもだが、のちに、動物をキャプチャーした作品が登場するなど、「アニミズム」という考え方はEndoに根付いている。「自然を見て何か発見していくこと、一瞬でも自分を解放したり、繋がりを感じたりするのがアニミズムだと思っているんですが、写真を撮っているとき、その感覚が訪れるんです。すごく没入するというか、じっくり向き合ってパシャパシャ撮るというよりも、スイッチが入ってバーッと撮る感じが多くて。そのときの体験をとても大事にしています。小さな頃からそういった瞬間はあったのですが、その時間はすごく救いでした。気分が落ちるときって自我が前面に出てくるけど、そういったものが全部解放される。花の写真はまさに没入でした」

最後に、作品において譲れない点を聞いた。「デザインに関わったからかもしれませんが、構成を意識することは多いです。実は、写真を見るのはそんなに好きではなくて、絵画を見る方が好き。色味や構図など、写真の中の絵画性は大事にしています。マーク・ロスコやサイ・トゥオンブリーなど大きな抽象画を描いている作家が好きですね。ヒルマ・アフ・クリントという、1862年スウェーデン生まれの画家も最近とても気になっています。彼女は神秘主義でカンディンスキーよりも早く抽象画を描いていたんです。スピリチュアルな部分で影響を受けているかもしれません」

東京を拠点に活動。自然における人為の介入をデジタル加工で模し、アニミズム的な自然観をテーマに写真作品を制作。主な展示に個展『Kamuy Mosir』(2021、KITTE 丸の内、東京 )、個展『the belief inSpiritual Beings』(2022、NADiffGallery、東京)、『浅間国際フォトフェスティ バル 2022』参加など。主な受賞に『写真新世紀 2021』佳作入賞 ( オノデラユキ選 ) がある。

INTERVIEW: Mika Koyanagi

Questionnaire

1

あなたは何をしている人ですか?

写真家 

2

あなたの仕事で一番好きなことを教えて下さい。

遠くへ移動する理由になること。

3

今の仕事をする上できっかけになったことはなんですか?

パンデミック

4

これまで最も影響を受けた人物は誰ですか?
その理由も教えてください。

親、環境が自分の土台を形成すると思うから。

5

あなたを3つの言葉で表すと?

感覚的、自由奔放、上の空

6

今一番興味のあることは何ですか?

ウィッチクラフト、麹

7

これなしでは生きていけないもの3つ

旅、自然、大切な人たち

8

いつも必ず持ち歩いているものは?

Iphone、煙草、ライター

9

モーニングルーティンは?

10

好きなカクテルもしくは飲み物は?

グァバジュース

11

時間を忘れるほど夢中になれることは?

撮影しているとき。

12

あなたにとって最高の贅沢は?

朝の光、真っ白い大きなベッド、海の中、船の上

13

刺激を受けるのはどんなとき?

面白い人間に出会ったとき。

14

一番好きな色は?

白、グレー、赤、水色

15

好きな味は?

塩、砂糖

16

人生で最も重要な決断は何ですか?

ちょうどこれからしていくとき。

17

人生で最も感動した瞬間は何ですか?

山を登ったとき、初めて海の中を覗いたとき、流星群を見た時、歌を聴いたとき、絵を見たとき。

18

最近読み終わった本は?

『みどりいせき』大田ステファニー歓人、『ガザとは何か』岡真理、

『すべての、白いものたち』ハン・ガン。

今読んでいるのは、『聖魔女術』スターホーク。

19

好きな作家は誰ですか?

川上未映子

20

本棚にある本で好きなものを3つ教えてください。

『アミ 小さな宇宙人』エンリケ・バリオス

『アナスタシア』ウラジーミル・メグレ

『アルケミスト』パウロ・コエーリョ

21

今旅するならどこに行く?

屋久島

22

行ってみたい国は?

アイスランド

23

お気に入りの宿は?

  

24

最も印象に残っている場所は?

大瀬崎 / 静岡県、小値賀町 / 長崎県、

豊岡 / 兵庫県、阿寒 / 北海道

25

あなたのホームはどこですか?

  

26

最近よく聴いている音楽は?

  

27

好きなミュージシャンは?

  

28

どの曲ならずっと聴いていられる? 

  

29

好きな映画を3つ教えてください

『美しき緑の星』コリーヌ・セロー

30

最近観た映画で好きだったものは?

『パーフェクト・デイズ』ヴィム・ヴェンダース

『瞳をとじて』 ビクトル・エリセ

『哀れなるものたち』ヨロゴス・ランティモス

31

初対面の人に対して最初に目がいくポイントは? 

32

友達に会った時のあいさつは何?

  

33

人から受けた最善のアドバイスは?

感謝すること

34

寝る時に着るものはなんですか?

下着

35

あなたのモットーは何ですか?

なんとかなる

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